メモ

英語では“感情が見える”らしい

まずは下の例文を読んでください: (1) 私は彼が{悲しい/嬉しい/楽しい}のを見たことがない. (2) ぼくが悲しいのを見て,田中さんがはげましてくれた. (3) ぼくが嬉しいのを見て,山田さんが「なにかいいことがあったの?」と訊いてきた. (1)-(3) いず…

英語表現のメモ:"A is orthogonal to B"=「A と B は別問題だ」

タイトルのとおり,A is orthogonal to B は「A と B は別問題だ」と訳してあげるといいケースがあります. 例文と解説 orthogonal はもともと数学の用語で,英和辞典を引くと「[to X に]直角の・直交する」または「矩形の」といった訳語が掲載されていま…

「部分的期間の定理」

部分的期間の定理 発話時現在を含むことによってアルを適切とする状態があるとき,その状態の継続期間のうち,発話時現在以前の部分を取り出すことによって,必ずアッタも適切となる. (金水敏「テンスと情報」,音声文法研究会 (ed.) 『音声と文法3』くろ…

事例:現在の状態に(も)言及しつつ過去時制を使っているケース

Brin said a small number of "crazy" webmasters, upset that the Google crawler had disrupted their sites, retaliated with massive email attacks or threatened legal action. "They talk to you, try to sue you, and we ended up shutting off Web …

寺村 (1984) から抜粋:コトと主観的判断の「融合」

やっぱり寺村秀夫『日本語のシンタクスと意味』は勉強になります. 日本語のシンタクスと意味 (第2巻)作者: 寺村秀夫出版社/メーカー: くろしお出版発売日: 1984/09/20メディア: 単行本購入: 3人 クリック: 6回この商品を含むブログ (5件) を見る 日本語を勉…

「あの映画,面白いよ/面白かったよ」

評価の形容詞「面白い」が現在/過去時制で示す対比がぼくにとっては謎です: A: この映画,面白い? B1: 面白いよ. B2: 面白かったよ. 質問への答えとしてどちらも適切なのですが,「面白い」の方は永続的な映画の特性を述べているのに対して,「面白かっ…

「すぐあります」

さっきみかけた表現: 餃子 焼きたて すぐあります この「すぐあります」が興味深いです. たとえば,「すぐ片付けます」と言った場合ですと,「すぐ」があらわしているのは片付けにとりかかるまでの時間が短いことであったり,あるいは,片付けが終わるまで…

おしえてラネカーせんせい:不定詞をどう分析するか

2008-08-02追記:推論が成り立ってない部分がありました.当該部分に打ち消し線を引いています. 「to do がよくて *to can がダメな理由」のコメント欄で id:killhiguchiさんとお話していた話題のつづきです. killhiguchiさんからメールでいただいた査問*1…

フェアな引用:「異論の階層」に関連して

ヨーロッパの書物や雑誌で見る論争と,日本のそれとの一つの顕著なちがいは,前者では,論争相手の主張が──多くの場合 非常に長い引用で紹介されているので,相手が大体 何をいかにのべているのかが反対者の文章を通じてでも見当がつく.日本の場合には,相…

事例:"he was a different race five times"

不可算名詞が通常は個数を数えられない (#three wines / three glasses of wine) のと同じように,ふつう,状態述語は回数を繰り返せません: A specific indication of replication is the adverbial phrase again and again. As expected, it only occurs …

「視野・探索」と「隠れたシナリオ」:頻度副詞が名詞句を量化しているようにみえるケース

定延利之『煩悩の文法』(pp.62-66) では,次のような例をあげて,頻度(「時間的な分布」)が「空間的な分布」を表しているかのようにみえることがあると述べています: 定延なんて名字の人,めったにいないですよね. どんな反社会的な考えでも,行動に表わ…

“冠詞が名詞に「つく」って言うな”の話

マーク・ピーターセン『図解!英文法入門』より,「たしかにそうだなぁ」と思った箇所を抜粋します: まず,「a を付けるか the を付けるか……」と言いますが,実はこの言い方はちょっとヘンです.あえて「付ける」という言葉を用いるなら,本当は「a や the …

高野文子インタビューから抜粋

『黄色い本』を描いたあとに,どっと疲れが出ましてね.漫画を描くのがいやになってしまったんです.顔がダメなんです.描きたくない.風景なら平気なんです. マル描いて目鼻を入れたあたりでげんなりする.自分のものじゃなく,ひとの描いた絵でも,目鼻の…

身振り手振りで「自然な思考の順番」がわかるとな

「英語式語順は、自然な思考の順番に反する」研究結果 - WIRED VISION Susan Goldin-Meadow, Wing Chee So, Aslı Özyürek, and Carolyn Mylander, "The natural order of events: How speakers of different languages represent events nonverbally" - Proc…

メンテナンス中に動画の削除はできないとのこと

ニコニコ動画でメンテナンスがあるたびに,「あの動画はメンテナンス明けにはきえてんじゃない?」といった発言を目にすることがありまして,なんとなくメンテナンス作業には違反動画の削除もふくまれているように思いこんでいたのですが,そんなことはない…

考え直さなきゃ

先日のエントリで,下記のようにじぶんの考えをまとめておいたのですが── ぼくの考え: 基本的に文学テキストでは実在する作者の意図を考えなくてもいいけれど,通常の場合,テキストを理解するにはその虚構の語り手の意図を考えないといけない. 文学にかぎ…

虚構伝達・偽装言語行為

昨日のエントリに関連して,少し虚構論をつまみぐいしています.よくわからない領域ですが,ぼくからみて「ひとまずこれなら出発点にしやすそうだな」と思ったのが下記の「虚構伝達」の定式化: 話者Sは テクストT を発話することによって,以下のことを意図…

kugyoさんへの提案:文/発話および現実/虚構の意図を区別すると便利です(多分)

2008-07-01追記:案の定,下記の文章にはずぼらな点がありました.kugyoさんが指摘してくださっていますので,そちらもあわせて参照願います. id:kugyoさんがとても思考を喚起する文章を書いておられます: 「首尾一貫性に基づく作者の意図の擁護、を論駁す…

(鳴)

これはwww

language & personality

とりあえずメモだけですが── ■ロイターの報道: 「バイリンガル、話す言語により性格変えている可能性=米研究」 - ロイター (2008-06-25) 「Switching languages can also switch personality: study」 - Reuters (2008-06-24) ■akihitoさんのエントリ: 「…

図解:ポール・グレアムの「異論の階層」

上記の図は『ハッカーと画家』などで知られるポール・グレアムのエッセイ "How to Disagree" の内容を図解したものです(クリックすると大きく表示されます).Michael Anissimov の "Paul Graham’s Disagreement Hierarchy" の図をそのまま日本語に置き換え…

文献メモ:「言語学の論証における直観」

Thomas Wasow & Jennifer Arnold, "Intuitions in linguistic argumentation," Lingua 115 (2005) 1481–1496. アブストラクト Generative grammarians have relied on introspective intuitions of well-formedness as their primary source of data. The ov…

Syntactic Theory: a formal introduction (Second Edition)

今日届いたばかりでちゃんと読んでないのですが――Syntactic Theory: A Formal Introduction (Csli Lecture Notes, No. 152)作者: Ivan A. Sag,Thomas Wasow,Emily M. Bender出版社/メーカー: Stanford Univ Center for the Study発売日: 2003/04/01メディア:…

やまじシスターズからのおしらせがきましたよ

「ポストカード情報」- やまじシスターズからのおしらせ ──と書きつつ,じつは注文したことはないんです.送料が高くて><

ニール・スミスの「序文」から抜粋(還元主義にご注意を)

(…)この論にはさらなる含意がある.それは,科学における還元 (reduction) に関する一般的な見解は不適切だ,ということだ.言うまでもなく,我々としては,心的なものについての諸理論を──言語学も含めて──脳と関連領域の理論に統合したいとは思っている…

『誤訳―ほんやく文化論』

W.A. グロータース (Willem A. Grootaers). 『誤訳―ほんやく文化論』(柴田武訳,五月書房,2000年) これは翻訳(術)の本というより,言語学の本です.この本にはフレーム意味論という用語は出て来ません (し,そもそも著者はフレーム意味論のこと自体,知ら…

抜粋:英文を「ほどく」

(4) Every statistical comparison shows that the North is poorer than the South. もし,この文を次のように訳したとしたら,どうであろうか. (5) すべての統計的比較は,北部のほうが南部より貧しいことを示している. もしも,これが入学試験における…

対偶はわかりにくいですよね (another left-over-junk)

ナシーム・タレブ『黒い白鳥』から抜粋. 次の点は,確証のアホくささをさらに例証してくれる.もし白い白鳥をもう一羽見るたびに「黒い白鳥なんていない」という確証が得られると思っているなら,純粋に論理的な理由により,次の言明も受け入れなくちゃいけ…

in turn の訳し方

英和辞書を引くと「順番に」といった訳語があげられている in turn は,「すると」や「今度は」と訳すとしっくりくることがあります:たとえば── Program B would subsidize insurance companies, who would in turn spend much of the money on marketing a…

「主観性」@トローゴットと「主体性」@ラネカーのちがい

おなじ "subjectivity" というタームを使っているのでこんがらがっちゃいますが,トローゴットとラネカーでは定義がちょっとちがいます.上記の訳文でラネカーも少しふれていますように,トローゴットの場合,ある構成素が (a) 話し手の主観的な態度を (b) …