“冠詞が名詞に「つく」って言うな”の話
マーク・ピーターセン『図解!英文法入門』より,「たしかにそうだなぁ」と思った箇所を抜粋します:
まず,「a を付けるか the を付けるか……」と言いますが,実はこの言い方はちょっとヘンです.あえて「付ける」という言葉を用いるなら,本当は「a や the のあとに名詞を付ける」と言ったほうが性格なのです.たとえば,ネイティブ・スピーカーが「誰か1人の同時通訳者が必要だ」と言おうとする場合,仮に simultaneous interpreter(同時通訳者)という言葉がすぐに思い浮かばなかったとすると,
We need a... a... a... simultaneous interpreter.
と,その言葉を思い出すまで不定冠詞の a を繰り返します.これは,同時通訳者であれば誰でもいい場合なので,話者の頭の中では,特定の1人の通訳者を思い描いているわけではありません.
(マーク・ピーターセン『図解!英文法入門』アスコム,2007年,p.23)
英語の場合,冠詞 {a/an, the, 無冠詞} は「定/不定」や「可算/不可算」といった抽象的な概念──おおまかな捉え方──を合図していて,あとに続く名詞はその枠に具体的な内容をはめ込む感じですね*1.
また,ピーターセンの『続・日本人の英語』では次の例をあげて面白いことを言っています:
I was out walking { dog/a dog/my dog }.
〔冠詞抜きのdogの場合〕なかなかわけの分らないことになる.しいて言えば,犬肉の詰めこまれた乳母車を押しているようなことくらいは浮かぶ
不定冠詞の“a dog”だったら,自分でペットとして飼っている犬ではなく,「ある犬を連れて」という表現である
(ピーターセン『続・日本人の英語』岩波新書,1990年,pp.59-60)
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*1:ラネカーの認知文法はだいたいそういうことを言っていることで有名ですが,Liliane Haegeman & Jacqueline Gueron の English Grammar にも似た主旨の記述があったような?