Yalcin & Knobe (2010 squib)「『ファット・トニーは死んだかもしれない』:認識的法助動詞に関する実験の覚え書き」


ある「立ち聞き」場面設定において認識様相の言明と様相なしの定言的断定が真だと判断するか偽だと判断するかを調査しました,という squib:


場面設定と例文は次のとおり:

Fat Tony is a mobster who has faked his own death in order to evade the police. He secretly plants highly compelling evidence of his murder at the docks. The evidence is discovered by the authorities, and word gets out about his apparent death. The next evening, from his safehouse, Fat Tony watches a panel of experts on the news discussing the question of whether he is dead.
ヤクザのファット・トニーは,警察の手を逃れるために死亡を装っている.彼は,自分が殺害されたと思わせる非常に説得力のある証拠を波止場に秘密裏に仕込む.その証拠が当局により発見され,どうやら彼は死んだらしいと噂が広まる.翌朝,隠れ家でファット・トニーはニュース番組で専門家たちが自分が死んだかどうかを論じているのを視聴する.

  • Expert A has had a good look at the evidence found at the scene. “Fat Tony is dead,” he says.
    • 現場で発見された証拠を吟味した専門家 A は,「ファット・トニーは死にました」と述べる.
  • Expert B has also had a good look at the evidence, but his assessment is more cautious. “Fat Tony might be dead,” B says.
    • 同じく現場で発見された証拠を吟味した専門家 B は,もっと用心深い判断をして,「ファット・トニーは死んだかもしれません」と述べる.


著者たちは,この場面設定を128人に見せて,次の4項目からランダムに選ばれたものを質問した:

  • 専門家 A の言ったことは真である.
  • 専門家 A の言ったことは偽である.
  • 専門家 B の言ったことは真である.
  • 専門家 B の言ったことは偽である.


与えられた項目について,「完全に反対」(1) から「完全に賛成」(7) までの点数をつけるようもとめられた.中間である 4点には「どちらでもない」("in between") と記した.

結果の平均値は以下のとおり:

- IS MIGHT
1.71 (1.38) 4.86 (2.45)
6.11 (1.70) 1.94 (1.67)


細かいことは原文に当たってください.質問されても困りますし.

Gregory Hickok「発話産出の計算神経解剖学」


twittershokou5さんと killhiguchiさんの話を立ち聞きして「なんかすごいらしい」とメモる:

Gregory Hickok, "Computational neuroanatomy of speech production," Nature Reviews Neuroscience 13, 135-145

アブストラク


Speech production has been studied predominantly from within two traditions, psycholinguistics and motor control. These traditions have rarely interacted, and the resulting chasm between these approaches seems to reflect a level of analysis difference: whereas motor control is concerned with lower-level articulatory control, psycholinguistics focuses on higher-level linguistic processing. However, closer examination of both approaches reveals a substantial convergence of ideas. The goal of this article is to integrate psycholinguistic and motor control approaches to speech production. The result of this synthesis is a neuroanatomically grounded, hierarchical state feedback control model of speech production.

発話産出はもっぱら2つの伝統で研究されてきた.心理言語学と運動制御の2つである.これらの伝統が互いにやりとりすることはめったになく,その結果として断絶が生じている.これには,分析のレベルが異なることが反映されているように見える:運動制御は下位レベルの調音制御に関わるのに対して,心理言語学はより高いレベルの言語処理に焦点を置いている.だが,両者のアプローチをよく検討してみれば,かなりのアイディアの収斂が起きているのがわかる.本稿の目的は発話産出への心理言語学・運動制御の両アプローチを統合することである.この総合によりもたらされるのは,発話産出に関する神経解剖学的な基盤をもつ階層的な状態フィードバック制御モデルである.


もちろん,英文法屋からみれば遠い世界のはなしです.というか,ペーパーの本文にアクセスする環境がないという.

アビジット・バナジー&エスター・デュフロ「なぜ子どもたちは学ばないのか」


『貧乏人の経済学』の著者アビジット・バナジーエスター・デュフロが執筆した "Why Children Aren't Learning" (April 2011, PDF) を「さりはま」さんが訳してらっしゃる:


貧乏人の経済学――もういちど貧困問題を根っこから考える

貧乏人の経済学――もういちど貧困問題を根っこから考える


▼ TEDでの講演 (2010):

"Esther Duflo: Social experiments to fight poverty"


フランク・パーマー Mood and Modality(第2版)にいちおう翻訳があるらしい


Frank Palmer, Mood and Modality(叙法と様相)は様相(モダリティ)研究の基本文献でして,誰か訳せばいいのにと思っていたのですが,下記の翻訳があるそうです(via killhiguchiさん):

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TechCrunch の Surface 記事の冒頭(メモなので読む意義ないです)


TechCrunch の記事「Microsoft Surfaceにさわってみた, 独特のこだわりで超力作になってる」が,パッと読んで妙な訳文だったので,冒頭だけチェックしてみました.

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断線したイヤホンのプラグを交換したり:オーディオテクニカ ATH-EM700ti の例


このブログをもっとフリーダムな感じで使ってみよう企画.

今回は,プラグ付近で断線を起こしたまま放置していたイヤホンを直してみました.

修理したのは,むかし愛用していた audio-technica の ATH-EM700ti せんせい.このごろは売り場でもあんまり見かけない,耳掛けタイプのややお高いイヤホンです.なかなかよい音を鳴らしてくれます.チタンのハウジングもかっこいいぞ! 実は保証期間中に断線をメーカーさんに無償修理してもらったこともありました.しかし,いまはもう保証期間はとっくに過ぎ去り,製品じたいも生産中止.



プラグ付近の断線はありがちなケースのため,ネットに修理のやり方があれこれ書かれております.


いまさら同じようなことを書いても価値はなさそうですが,これと同じ機種を直そうと思った人がいつか検索で参考にできるかもしれないので,いちおうメモっておきます.

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6月前半のゲリラ翻訳(ここ以外での)

クルーグマン@道草

その他