wikipediaより：精神科医 John Fryer のゲイ開示＠アメリカ精神医学会

▼ 写真：正体を隠すため，仮面とカツラをつけ，タキシードを着込み，変声マイクをとおして語る John Fryer（右）

twitter でこんなことをつぶやいたのですが：

アメリカ精神医学会で John Fryer がマスクをかぶり正体が分からない状態で自分はゲイだと告白したのは，1972年のこと．当時，ゲイは精神疾患だとされていた．それほど遠い昔じゃあない．
(http://twitter.com/optical_frog/status/5034680217)

――というようなことを右のエントリをみてふいに思った：オタクを認知障害とするのは酔狂でしかない http://d.hatena.ne.jp/ookamu/20091020/p1
(http://twitter.com/optical_frog/status/5034714299)

もののついでなので，英語版 wikipedia "John E. Fryer" の項目から，彼が演説をおこなった経緯に関する箇所 ("1972 speech") を抜粋して訳しておきます：

同性愛が精神疾患のひとつに数えられていた当時，Fryer はアメリカの精神科医としてはじめて公にみずからのセクシュアリティについて語った．その前年，1971年にワシントンで開かれた大会でゲイ活動家 Franklin E. Kameny が会議中にマイクをうばい，同性愛の診断について長広舌の抗議を行った．アメリカ精神医学会でゲイの権利に関して抗議されたのはこのときがはじめてである．

この抗議がきっかけとなり，翌1972年の大会では同性愛と精神疾患に関するセッションが「精神科医：同性愛者の友か敵か」と題して開かれた．このセッションには Kamedy も壇上に同席した．「匿名 H 博士」とのみ紹介された Fryer は，仮面・カツラ・タキシードに身をつつんだ姿で登壇し，声を変えるマイクを通して語った．

Fryer博士の演説は「私は同性愛者です．私は精神科医です」という言葉で始まった．続けて彼は，アメリカ精神医学会のゲイ精神科医たちの人生を語った．彼らは差別をおそれて同僚からはみずからのセクシュアリティを隠さねばならなず，しかも，ゲイのコミュニティで自分たちの職業が侮蔑されていたため，友人の同性愛者たちにもこれを明かせなかった．また，Fryer の演説は，いくつかの方法を紹介し，セクシュアリティを開示せずとも精神医学界における偏見に対し巧妙かつ「創意をもって」挑戦し，じぶんたちの性的選好が精神病理の徴候だと考える社会にゲイの患者たちが適合するのを助けられることを述べた．

この翌年，Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders から同性愛は除外された．Fryer の演説は精神科医のコミュニティがこの決定を下すよう説得される過程の重要な要因として引用されている．

2009-10-22追記：

Edward Shorter, A Historical Dictionary of Psychiatry には次のような記述がみられます：

Homosexuality becomes a nondisease for psychiatry (1973). The reassessment of homosexuality within the American Psychiatric Association began after sustained attacks from within bysuch psychiatrists as Thomas Szasz (see ANTIPSYCHIATRY: Szasz) and Judd Marmor (1910-2004). (Both had been trained as psychiatrists.) There were also increasing attacks from without: at the annual meeting in 1970 ofthe American Psychiatric Association (APA) in San Francisco, a group of gay activists interrupted the proceedings of a panel on "issues in sexuality," cursing at New York psychoanalyst Irving Bieber (1908-1991), who had argued for conversion therapy. Again, in Ma 1973, the APA at its annual meeting organized a symposium on "Should Homosexuality Be in the APA Nomenclature?" The presentations, which included that of gay activist Ronald Gold ("Stop It, You're Making Me Sick!") and gay psychiatrist Richard Green (who argued that "heterosexuality should be in the APA nomenclature"), were printed in teh American Journal of Psychiatry in November 1973. At the instigation of Robert Spitzer, in December 1973 the board of trustees of the APA decided that homosexuality would no longer be considered a psychiatric illness; this decision was ratified in a vote by the membership the following year.
（太字強調は原文のもの）

A Historical Dictionary Of Psychiatry