Chapter 7: HUMAN SOCIETY:[7-51] 〜 [7-56]


続けて,SFAA第7章のGLOBAL INTERDEPENDENCE([7-51]〜[7-56])を訳しました:

[7-51]

グローバルな相互依存 GLOBAL INTERDEPENDENCE

国際経済システムと共通の環境問題(核兵器のグローバルな影響や森林破壊,酸性雨など)をとおして,諸国と諸文化はますます互いの依存関係を深めるようになっている.また,海外旅行やマスメディアをとおしてお互いについてもっと知るようにもなってきた.グローバル・システムはその結びつきを強めており,ある地域での変化が他の地域に多大な影響をもたらすようになっている.たとえば,地域紛争はその国境を越えて他国にまでおよび,石油価格の変動は世界中で経済の生産性・貿易収支・利率・雇用に影響する.ほぼ全ての国の富・安全・一般の福祉は互いに関係し合っている.孤立主義政策はもはや維持しがたく,核兵器の拡散を管理したり世界金融システムを激しい変動から守るといったグローバルな問題の対応にはすべての国の協調行動が不可欠であることに関して,大半の国々の指導者たちは合意を形作りつつある.

[7-52]
国どうしは 多種多様な公式・非公式の制度をとおして関わり合っている.公式の制度には,外交関係,軍事・経済の連合,国際連合世界銀行といったグローバルな組織などがある.しかしながら,国の政府と異なり,グローバルな組織はそのメンバーに対して限られた権威しかもっていないことがよくある.非公式な制度には,文化的交流,旅行者の出入国,留学生の交流,国際貿易,世界中に会員を有する非政府組織(アムネスティ・インタナショナルや反飢餓キャンペーン,赤十字,スポーツ団体など)の活動などがある.

[7-53]
ある国の豊かさは,その労働者の営為と技能,天然資源,そうした技能や資源を生み出すのに利用可能な資本とテクノロジーに左右される.しかし,国の豊かさを左右するのは,その国がみずからどれだけ産出できるかだけではない.その生産物を他国がどれほど求め,他国の生産物を自国がどれほど求めるかの収支によっても左右される.国際貿易は,石油や食用作物といった資源や生産物が不足していることによってのみ生じるわけではない.たとえ自国で必要なものをすべて生産できるとしても,他国との貿易から利益がえられるのである.ある国が(品質やコスト,またはその両方の点で)もっとも効率よく生産できるものを生産し,その生産物を他国に売るなら,理論的にはそのシステムによりすべての参加国の状態を改善するのが可能となる.

[7-54]
しかしながら,現実にはさまざまな要因が影響して,国際貿易の経済的現実をゆがめている.たとえば,貿易を阻害することのある要因としては,経済的・政治的に力の勝る諸国による搾取に対する恐怖,外国との経済的競争で負けてしまう一部労働者の集団を保護せよとの要求,将来の紛争において利用不可能になりうる一部の生産物を外国に頼りたくないとの意志などがあげられる.

[7-55]
国際的なつながりは強まっているため,国際政策と国内政策の区別は多くの場合にはっきりしない.たとえば,我々の購入する自動車や衣服の種類と値段を決定する政策は,国外貿易と国際収支にもとづいている.自国の農業生産物は国内政策だけでなく海外市場にも左右される.国際市場はすべての国にとって有益なものではあるかもしれないが,たとえそうだとしても,それぞれの国の一部の集団にとっては不利益なものとなるかもしれない.たとえばアジア諸国で安く自動車を生産すれば全世界の自動車購入者にとって利益となるが,同時に他の国の自動車メーカーは仕事を失ってしまう.みずからの宗教的・政治的イデオロギーに関して強い合意をかためている国は,そうしたイデオロギーを他国に積極的に広め競合する思想をもつ集団を弱体化する外交政策を追求するかもしれない.

[7-56]
世界の社会的・経済的・環境的システムの相互依存が強まることで,社会的決定の合意について予測が立てにくくなっている.世界のどの地域の変化も,増幅されてそれ以外の地域に影響を及ぼし,ある人々に利する一方で他の人々には負担をかけることがありうる.また,ある変化により不安定性と不確実性がうまれ,すべての人々に不利益がもたらされる可能性もある.世界の安定は,諸国がビジネスや情報交換の制度をより信頼できるものにし,グローバルな破滅を警告する監視機構を発展させ,もっとも富める国ともっとも貧しい国の生活水準の大きな格差を縮小するかどうかにかかっているのかもしれない.社会システムに参画する人々の場合と同じく,諸国もまた,短期の損失を被りつつ世界経済の安定という長期の利益を達成することの方がみずからにとって有益とみることもときにあるものだ.