義務法@古典日本語
忘れないうちにメモしておこうと思いまして.
叙法のうち,「ねばならない」といった意味を表す「義務法」(debitive) は『言語学大辞典』によりますとラトヴィア語のみにみられると記されています:
一方,Alexander Vovin は古典日本語に義務法を認めています:
5.0.3 Mood
Mood is the pride and beauty of Classical Japanese. There are twelve moods in the language:
- indicative (no marker),
- imperative (suffixes -e and -yo),
- tentative (suffix -am-),
- negative tentative (suffix -azi),
- second tentative (suffix -uram-),
- debitive (suffix -ube-),
- negative debitive (suffix -umazi),
- optative (suffix -amafosi),
- negative optative (suffix -amau-)
- subjunctive (suffix -amasi)
- conjectural (suffix -umer-)
- and assertive (analytical, attributive + nar- 'to be').
(Alexander Vovin, A Reference Grammar of Classical Japanese Prose, Routledge, 2003; ※引用に当たって箇条書きにしました.)
それはさておき,ラトヴィア語は言うに及ばず古典もさっぱりな自分であります.
ヘンだけど意味のある条件文
下記の反実仮想条件文はマンガからの引用で,小人さんの取り替え子にされた女の子の発話です:
パパも人間なんかじゃなくて
ゴブリンとかブラウニーとかのとこの赤ん坊と替え子にしてれば
わたし こんなに大きくならなかったのに
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なにが意味論的に面白いかといって,ここでは「人間」ではなく「ゴブリンとかブラウニー」を替え子にしたらという反事実条件において,「わたし」という個体は交換されずにその種族だけが変わるような意味になっているということです.
もちろんそんなことは実際には不可能ですから,作中でもツッコミが入っています:
ゴブリンの子供なんかまともに育てられるわけないだろう
それに人間以外の替え子にしていたらおまえは今ここにいない
おかしな条件文ですが,一読してただちにそのおかしな推論を読者は理解できますし,おかしい部分もそれとして理解できます.これはフォコニエらが得意とする概念融合*1 の一例として分析することができるでしょう.
こういうのは,あとになって「ああ〜何かそういう実例があったんだけど どこだっけ〜?」となってしまうことが多々ありまして,とりあえずメモしてみた次第です.
*1:conceptual blending
そういえば
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ああ,とりあえずあと1週間くらいは死なないでおこうと思います.(´・ω・`)
『さくらの境』は完結.近年ではとくに好きな連載でして*1,もう,いつまででもぼんより楽しめそうな感じでしたが,でもこれぐらいが区切りとして丁度よかったのかもしれません.
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