虚構伝達・偽装言語行為
昨日のエントリに関連して,少し虚構論をつまみぐいしています.よくわからない領域ですが,ぼくからみて「ひとまずこれなら出発点にしやすそうだな」と思ったのが下記の「虚構伝達」の定式化:
話者Sは テクストT を発話することによって,以下のことを意図する.
(a) AW とは違うひとつの世界 TRW に位置する代理の話者・聞き手の組を S'・H' とするとき,聞き手 H が,テクストT とは H' に向けられた S' の発話である,という偽装[ふり]をすること.
(b) 同じ名によって明示的に指示されないかぎり,S' が S と対応関係にない,と H が受取ること.
(c) H が S'・H' 間のやりとりをもとに TRW の匿名の一員(H' が個人化しない聴取者なら,この一員は H' に含まれる)として自己投影することによって,TRW を中心とする現実体系を「ごっこあそびで信じる」こと.
(マリー=ロール・ライアン『可能世界・人工知能・物語理論』水声社,2006年,pp. 134-5)
なお,文中の AW と TRW はそれぞれ以下の略です:
- AW: actual world(現実世界)
- TRW: textual reference world(テクストの指示対象世界)
この定式化をもとに,たとえば話者が実在しないバージョンとかを具体例とともに考察していくとか,そういうこともできそうです──いや,すでになされているのかもしれませんね.
- 作者: マリー=ロールライアン,Marie‐Laure Ryan,岩松正洋
- 出版社/メーカー: 水声社
- 発売日: 2006/01
- メディア: 単行本
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※昨日のエントリに対してkugyoさんからいただいているお返事についてはまた後で書きます.