ちゃんとしようと思いました orz

〔...〕そもそも,キーワードとは,諸刃の剣である.重要な考えをわかりやすく一言でまとめたものであると同時に,本来ある豊かな内容を忘れて理解した気にさせてしまう恐れがある.確実なのは,研究においてキーワードのみを追いかけていると,独創的な結果を生み出すことが不可能になることである.キーワードとなった段階で,すでに才能ある研究者がすでにそれに関して成果を挙げたか挙げつつあるわけで,後発者はいわば二番煎じに甘んじるのである.生物言語学をキーワードとして挙げたが,重要なのは未来に向かって開かれている豊かな可能性であって,その可能性を現実のものとするには独自な発想と地道な準備が必要である.個人的な印象として,日本人はキーワードに淫しやすい傾向があるようなので,付言しておく.この傾向が進むと,えてして単なる茶飲み話にまで堕してしまうものだ.不勉強なまま研究の現状の把握を怠っている鈴木・田中 (2008) がその見本である.

渡辺明「生物言語学──未知の次元を目指す生成文法」『言語』2008年5月号, pp. 58-9)

ミニマリストプログラム序説―生成文法のあらたな挑戦 (シリーズ・言語学フロンティア)

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