Chapter 11: COMMON THEMES:[11-21]〜[11-23]


SFAA翻訳をちょっとだけお手伝い:


下記の範囲はid:new-wave1989さんがおやりになるとコメントしておられたのですが,「今非常に訳しづらいところに差し掛かっている」とのことで,参考までに拙訳をつくりました.たたき台にしていただければと思います.誤訳・誤記の指摘はいつでもどなたからでも大歓迎・大感謝です.

[11-21]

恒常性と変化

恒常性

科学・数学・テクノロジーでは,システム(系)が変化をしないでいるあり方に多大な関心がもたれている.システムを理解しようとして我々は単純化の原理を求めるが,変化しないシステムの諸相は明らかに単純なのである.システムを設計する際,我々はその特徴の一部が予想どおり一定にとどまるのを確実にしたいとしばしば考えるものだ.

[11-22]

安定と均衡

作用に使えるエネルギーが散逸していった結果,物理系(物理システム)が最終的にどうなるかというと,大半は均衡状態に落ち着く.たとえば,転がる岩は崖のいちばん下までくると止まり,グラスにいれた氷水はしだいに溶けてぬるくなって室温と同じ温度になる.こうした状態ではすべての力が釣り合い,すべての変化の過程は停止しているようにみえる──そして,系に新たに何かがなされるまでそのままとなる.その変化もやがては新たな均衡に落ち着く.さっきのグラスの水に角氷をもう1ついれてやると,その環境から熱がグラスへと伝わり,やがて再び中身の水温は室温と同じになる.一定の価格をもつある消費財が改善されると,需要が増加して価格が上昇し,費用が高くなることで買い手の数が減少していきもっと高い均衡価格で安定することがある.

[11-23]
均衡という概念は,継続的な変化が進行するシステムにも,そうした変化が互いに釣り合う限り適用できる.たとえば,失業者の総数が限りなくほぼ一定にとどまっているとき雇用市場は均衡していると考えられる.そのときの失業者や就業者の数の多寡は問題とならない.また,すべての種のメンバーの死亡数がそれぞれの繁殖数と同じ比率となっているとき,生態系は均衡している.


(※上記の訳文では併記の形にしましたが,"system" の訳語を「システム」・「系」のどちらかに統一した方がいいのかもしれません.)

 対応する原文はこちらです.

 ところで,上記の文章は小学校や中学校の理科(熱・運動)・社会(需要と供給)で教わる項目を含んでいますが,これを抽象度がもう一段高い一般的なシステムのお話でまとめなおしているのが面白かったです.なるほど「共通テーマ」なわけですね.