Chapter 7: HUMAN SOCIETY:[7-18]〜[7-24]


引き続きSFAA翻訳をお手伝い.

[7-18]

社会変化 SOCIAL CHANGE

生物種と同じく社会もまた,テクノロジーの発展や政治的伝統といった内的な力によって部分的に制約されたり切り開かれたりした方向に進化してゆく.ある世代の条件が次の世代に開かれる可能性の幅を制限・形成する.まず一方で,それぞれの新世代はその社会の文化的な形式を学ぶので,食物の生産・軋轢への対処・若者の教育・統治などの方略をあらためて発明しなくてすむ.他方で,それぞれの新世代は先行世代から引き継がれた未解決の問題に取り組まねばならない:たとえば,戦争につながりかねない緊張・広範囲にわたる薬物濫用・貧困と欠乏・人種差別・個人や集団のきりのない不満といった問題がそれだ.たとえば合衆国の初期の歴史における奴隷制の禍根は,いまなおアフリカ系アメリカ人に,そして一般にアメリカの経済・保健・司法制度に深刻な影響を与えている.さまざまな不満は,人々にそれを容認させるだけで解決されることもあれば,社会構造の革命としてあふれ出るかもしれない。多くの社会は、国境、宗教、過去の過ちに関する思いのこめられた信念を巡って、数世紀にわたって続く他の社会との紛争を続けている。


追記:青字部分の訳が欠落していました.黒影さん,補足ありがとうございました.

[7-19]
一般に政府は社会変化を設計する際に政策・法律・インセンティヴ・強制の手段をもちいる.場合によって,こうした試みが効果的にはたらいて社会的軋轢を回避するのが可能となることもあれば,逆に事態を悪化させてしまうこともある.たとえば,ソ連ではじぶんの私有地を耕したいという農民たちの意志に反して農業集落をつくったが,これは武力行使で何百万人もの人命を失ってはじめて実現された.合衆国の奴隷解放は血なまぐさい内戦を経てようやく達成された;その後100年たって,はっきりしたかたちの人種隔離は一部地域において法的措置・裁判所の差し止め命令・軍による警備によってはじめて撤廃された──そして,いまでも主要な社会問題であり続けている.

[7-20]
外的な要因──戦争,移住,植民地統治,移入された概念・テクノロジー・疫病,自然災害──もまた,それぞれの社会の進化の仕方を形づくる.たとえばソ連は両世界大戦で被った壮絶な損失によってその前途に大きな影響を受けている.アメリカン・インディアンの社会は欧州からの植民者たちがもちこんだ疾病と戦争によって荒廃し,追い払われてしまった.合衆国では,アフリカ人の強制的な移入と欧州・ラテンアメリカ・アジアからの相次ぐ移住の波によって国内の文化的多様性が拡がると同時に,政治・経済・社会のシステムが大きな影響を受けてきた.嵐や干魃といった自然災害は栽培作物の不作をもたらすことがあり,これにより欠乏・飢饉が生じる.さらには,ときとして移住や革命につながることすらある.

[7-21]
コミュニケーションや輸送が簡便になることによっても社会変化は促される.それまで地理的・政治的に隔絶していた集団どうしが互いの思考・生活・行動の様式のちがい,さらに場合によっては大木に異なる生活基準の存在をかつて以上に意識するようになる.移住やマスメディアは,たんに文化的混交をみちびくばかりでなく,一部の文化の根絶と別の文化の急速な進化にもつながっている.世界規模のコミュニケーションと輸送が容易になるにしたがって,価値と常識の衝突が余儀なくされた──これはプロパガンダのように意図的な場合もあれば,商業的価値の追求のようにたんなる偶然の結果である場合もある.

[7-22]
人口の規模,住人の特定地域への集中,および人口の成長パターンに影響するものには,物理環境と文化の諸相とがある:後者は経済・政治・テクノロジー・歴史・宗教などのことだ.経済問題に対応する際に政府がとる政策はさまざまに異なる──ある政策は人口の成長を抑制し,ある政策はこれを促進する.宗教的集団の中には,人口問題に対して強固な立場をとるものもある.たとえばローマ・カソリック教会は長きにわたって産児制限反対のキャンペーンを続けているが,その一方で近年になって他宗教の指導者たちは家族数を抑制するために産児制限を行うのを支持するようになっている.

[7-23]
多くの人々は,子供を産むかどうかを決めるに際して,政府の政策や宗教の教えとはあまり関係なく,実際的な問題を考慮している.たとえば母親の健康リスク,経済的・社会的な観点でみた子供の価値とコスト,居住空間の大きさ,親としてやっていけるかどうかの個人的感情といったことがそれだ.世界の一部地域では──さらにどこの国であれ教育の乏しい集団では──男女のカップルが現代的な産児制限の情報とテクノロジーについてほとんど知らなかったり,これらへのアクセスがなかったりするものである.合衆国では,若者の性的関係が安易になる傾向にともなって,予期せぬ妊娠や意に反した妊娠の数が増加している.

[7-24]
これと逆方向に,社会制度も人口に影響される──人口の規模,その変化率,(年齢・性別・言語などの)性質が異なる人々の比率といった要因の影響がある.人口規模が大きく増加すると,職業の専門化,政府が負う新たな責任,新しい種類の制度が増え,いっそう複雑化した資源分配を整備する必要が生じる.下位文化がいっそう多様になれば,必要となる対応策もその分だけ多様になる.人口形態もまた社会的優先事項の変化に影響する.人口形態が変化している場合にはとくにそうだ.ある社会集団の規模が増加すると,その集団が社会に及ぼす影響も増加する可能性がある.その影響は,市場を通じてのものである場合もあれば(たとえば集団としての若者が運動器具をより多く買うようになるなど),投票力による場合(たとえば年配の人々が学校債の立法に投票する可能性は低い),あるいは社会計画の立案者が必要を認識するようになる場合もある(たとえば家庭の外で働く母親が増えれば児童保育プログラムが必要となる).


対応する原文はこちら


 これで,第7章の残りは2つのセクションとなりました: