パーマーは認識様相も基本的に「主観的」および「遂行的」だと述べている


パーマーせんせいは義務(束縛)様相を原則的に指令型言語行為をともなうもの(したがって用語の本来のイミで遂行的)だと定義していました.これと並行して,認識様相も,彼は主観的かつ遂行的だと述べています.てっとりばやくわかる箇所を引用しておきます:

epistemic modals are normally subjective, ie that the epistemic judgment rests with the speaker ...
(通常,認識的法助動詞は主観的である,すなわちその認識的判断は話し手の責任に属す […] )
(Palmer 1990: 51)

This was shown in the suggested paraphrases, eg for MUST ‘The only conclusion that I can draw is that…’, because normally the sentences would be given a subjective interpretation.
(このことをパラフレーズが示している.例えば MUST ならば「私が引き出しうる唯一の結論は…である」となるのは,通常その文に与えられる解釈が主観的なものだからだ.)
(Palmer 1990: 51)


ただし,これには保留がつきます:

Apparently he must have done it」.It is, however, possible to invent examples where the epistemic judgment is not specifically that of the speaker, and it is even possible for the speaker to disclaim his own responsibility for the judgment by saying, for instance, I know this may be true or Apparently he must have done it.
(とはいえ,認識的判断がべつに話し手のものではない例文をつくることも可能なのであり,さらにまた,話し手みずからが自分の責任を否認することも可能で,それには例えばこう言えばよい:I know this may be true(そうかもしれないのはぼくも知っている),Apparently he must have done it(どうやら,彼はそうしたにちがいないようだ))
(Palmer (1990: 51)


この例のポイントについて少し補足が必要でしょう.主節で this may be true と言えば,ふつうは話し手がそのように推量しているという意味にとられます.ところが,叙実動詞を使って I know this may be true というと,この補文は事実であるという前提が生じ,他の誰かの視点による(または「客観的な」)認識様相に解釈されるわけです.


そして,問題の,主観的=遂行的だと述べている箇所:

Moreover, the clearest evidence of the subjective('performative')nature of the epistemic modality is the fact that the relevant modals occur only in the present tense, for the judgment and the act of speaking are simultaneous and so can only be present.
(さらに,認識様相が主観的(「遂行的」)であるもっとも明らかな証拠は,当該の法助動詞が生起できるのは現在時制に限られる点にみてとれる.判断と発語の行為は同時に起こり,したがって現在時でしかありえないからだ.)
(Palmer 1990: 51)


さて,よく引用されるとおり,パーマーの様相4分類は次のとおりになっています:

  • 認識様相 epistemic modality
  • 義務(束縛)様相 deontic modality
  • 証拠様相/証拠性 evidential modality / evidentiality
  • 力動様相 dynamic modality


しかし,これに交差する分類として*1 この分類のなかに,主観的(遂行的)なものとそうでない客観的なものという対比がある点もおさえておかねばなりません.そして,もちろんこれは Lyons (1977) の様相論とつながっています.


参考までに過去の関連エントリ:

ひみつきちの方にアップロードしているライオンズ論文へのリンク:

ライオンズ「直示と主観性/主体性

*1:定義に含まれているので,べつに交差してないですね.てへ.