アセモグルせんせいにきく:近代の経済成長 (3/3)


アセモグルのインタビュー,今回でおわりです.

PDF を例によってアップロードしておきます:こちら

Romesh: ダロン,この25年間で経済成長の理解がどれほど進んだのか,おおまかに言ってくれますか.つまり,70年代には,経済成長についてはあまり研究がなされてませんでしたよね.当時は,技術変化は外生的だからぼくらにはこれを説明する手立てはないとされてました.あれから,ものすごい進歩があったわけですよね? そこで,そのへんがどうなっているのか,説明願えますか.


ダロン:うん,たしかにものすごい進歩があったと思う.いま言ってくれたとおりね.ソローの成長モデル*1は一時代の知的記念碑ではある.でも,あれは先に進むための理論的な道具立てだったんですよ.ただ,周知のとおり,おおくの政策論議・知的論議はソロー的成長モデルを土台にしていて,そのソロー的成長モデルは物的資本を強調するわけね.物的資本はもちろん不可欠ではある.つまり,なにかしら機械がなければ,生産的になるはずもないからね.でも,最終的には,機械だけじゃダメで,適切な技術も必要だし,人的資本と新技術が互いに補い合う必要もあるし,新しいアイディア,生産の効率性,こうしたこと一切合切が必要なんだけど,それがソロー的成長モデルではすっぱりおきざりにされてた.


で,この25年間にどうなったかと言うと,理論的な面でも実証的な面でも,この研究課題がどんどん深く掘り下げられていったわけです.こうした要因をうまく動かして物的資本,機械からより多くを得る国がある,その原因はなにか? そうした国ではどういう種類の機械を導入しているのか?いろんな生産単位のあいだで資源をどう再配分しているのか?


これはある意味でなかなかに急進的なものではありましたが,しかしまた,漸進的でもありましたね.つまり,ポール・ローマーの研究のモデルや内生的な成長のいろんな基盤をいれたアギオンとホーウィットのモデルがでてきたわけですが,彼らがやったのは,ごくマクロの水準で内生的に技術が発展するのを考えることばをもたらすことだったんですよ.


そこで次のステップは,理論と実証の両方でここにさらなる内容を加えて,そのミクロの決定要因はなんなのかを突き止めることです.どこに技術が向かうのかがどう決まるのか,技術が効率的に使われる場所はどう形成されるのか,資本と資源は国の間でどう再配分されるのか,そうしたことを突き止めるのが次のステップです.


で,最終段階はそもそもの出発点にもどって,いわば技術的なちからが開放され,再配分がおこるのを可能にしている国々にはどんな制度的な特徴があるのか――より一般的に社会政治的な特徴があるのかという問いに向かいます.で,いまぼくらが認識していることはすごく重要だと思う.*2


で,ある意味で,ぼくらは経済成長の数理的構造と動学的モデルを手にしてる.そうしたモデルでは,技術や物的資本,人的資本を強調します.こうしたモデルでぼくらは厳密に考えられるようになる.それに,イノベーションのプロセスは本当に重要だし,資源を生産単位の間で再配分するのは本当に重要だし,基底をなす政治経済の制度的基盤――こうした再配分とイノベーションを支える制度的基盤はすごく重要で,ぼくらが前に進むためのおおきなプラットフォームになっている,そういうことがわかるようになるんです.


Romesh: ダロン・アセモグル,ありがとうございました.


ダロン:どうも.

とりいそぎ訳したのですが,うまく訳せていない箇所がいくつかあります.コメント・ご指摘がありましたらお願いします.

*1:Hicksianさんのご指摘にそって訂正しました.ありがとございます!

*2:ここの箇所の原文はよくわかりません:"And then the final stage has been kind of where we started and going back to the roots of it is that what are the institutional and the more general sociopolitical characteristics of countries that make it possible for these kind of technological forces to be unleashed and reallocation to take place. And I think those we realize now are really very important."