関係節の先行詞を額面どおりに読んじゃダメです


いま訳したサールのインタビューには,こんなセンテンスがあります:

So anyway, those are just very superficial thoughts [that I'd like to discuss in an eventual book about political philosophy].


表面だけをみると,カッコでくくった関係節の先行詞は very superficial thoughts ですから,これを独立節に書き直すと

I'd like to discuss very superficial thoughts in an eventual book...


となります.

 すると,サールせんせいは本のなかで「ごく表面的な考え」を論じたいと言ってることになってしまいます.

 でも,もちろん,これは誤読でしょう.

 正しく読むと,まず政治哲学の本でこういうことを論じたいなあというアイディアがあって,このインタビューではその表層だけを話しているんだよ,と彼は言っているのだと解釈するべきです.

 統語的にはあきらかに discuss の目的語ではありながら,それに対応する意味的な項は必ずしも very superficial thoughts ではないわけです.


 (こういう例は本とか読んでいるとたまにみつかるのですが,ちゃんとメモっておかないとやっぱり忘れちゃいますね.)