抜粋:「ドット事物」

Pustejovsky の他の重要な新提案は,事物のあるクラスは分類上の複数の位置を同時に占めるという観察によっている.そのようなクラスの1つは,小説 (novel) や新聞 (newspaper) のような,情報を担う事物である.物理的事物としては,小説には大きさや重さがあり,表紙やページがその部分としてある.しかし,小説はまた,1つの主題についての情報を担い,その主題に関係する一定の事象をあらわす.物理的事物としては,小説は印刷・製本されることによって存在するようになる.にもかかわらず,novel という単語は曖昧でも多義的でもない.両方の側面が同時に活性化されることがあるからだ:That novel about the Crimean War has a red cover.(クリミア戦争についてのあの小説には赤い表紙がついている).


Pustejovsky は,情報を担う事物のこのような二面性を,次の (30) に示すように,形式的クオリアの中で分類上の2つの素性を連接することによって形式化した.この連接を彼は ドット事物 と呼んでいる.

(30) [PHYSICAL OBJECT ● INFORMATION]

これらの側面のそれぞれがさらなるクオリア構造を引き起こす.物理的事物の方の構成的クオリアは,本の物理的な組み立てを記述し,目的クオリアには,本をどのように売り保存するかということが含まれる.動作主的クオリア〔主体クオリア agent qualia〕には,本をどのように印刷し製本するかということが含まれる.情報の方の構成的クオリアは,情報が何を叙述しているかを記述する.この場合,小説ならば,その情報が虚構であるということを指定する様相を伴ったものとなる.目的クオリアは情報が娯楽のためであることを示し,動作主的クオリアは情報が小説家によって作られたことを示す.さらに,二重のクオリア構造の間には重要なリンクが2つある.構成的クオリアどうしは,物理的事物が情報を担うという事実によってリンクされており,目的クオリアどうしは,人々が本を読み,この物理的活動の結果,読み手は物理的事物によって担われた情報を吸収するという事実によってリンクされているのである.こうした新提案は,要するに,クオリア構造は単なる素性のリスト以上のものであるということである.ドット事物は,複雑に相互に結びついたクオリア構造の対をもつのである.


(ジャッケンドフ『言語の基盤』p.444)

言語の基盤―脳・意味・文法・進化

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The Generative Lexicon (Language, Speech, and Communication)

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