義務法@古典日本語

 忘れないうちにメモしておこうと思いまして.

 叙法のうち,「ねばならない」といった意味を表す「義務法」(debitive) は『言語学大辞典』によりますとラトヴィア語のみにみられると記されています:

【義務法】

印欧語族バルト語派の中でラトヴィア語のみにみられる法で,「〜ねばならない(英語の must, have to)」を表わす.義務法は,直説法の一変種ともいえるが(エンゼリン J. Endzalin による),ラトヴィア語で広範に使用される形態であるため,独立の法として立てられている.この義務法は,直説法現在・過去・未来のほか,条件法,および,関係法(ラトヴィア relat〓vs izteiksme, 英 relative mood)の現在・過去・未来に現われ,全部で7つの形がある.

(『言語学大辞典:第6巻 術語編』三省堂,1996年)


一方,Alexander Vovin は古典日本語に義務法を認めています:

5.0.3 Mood

Mood is the pride and beauty of Classical Japanese. There are twelve moods in the language:

  • indicative (no marker),
  • imperative (suffixes -e and -yo),
  • tentative (suffix -am-),
  • negative tentative (suffix -azi),
  • second tentative (suffix -uram-),
  • debitive (suffix -ube-),
  • negative debitive (suffix -umazi),
  • optative (suffix -amafosi),
  • negative optative (suffix -amau-)
  • subjunctive (suffix -amasi)
  • conjectural (suffix -umer-)
  • and assertive (analytical, attributive + nar- 'to be').

(Alexander Vovin, A Reference Grammar of Classical Japanese Prose, Routledge, 2003; ※引用に当たって箇条書きにしました.)


それはさておき,ラトヴィア語は言うに及ばず古典もさっぱりな自分であります.