ヘンだけど意味のある条件文


下記の反実仮想条件文はマンガからの引用で,小人さんの取り替え子にされた女の子の発話です:

パパも人間なんかじゃなくて
ゴブリンとかブラウニーとかのとこの赤ん坊と替え子にしてれば
わたし こんなに大きくならなかったのに

竹本泉『よみきりものの… ヒトライフ』エンターブレイン,2007年,p.25)



なにが意味論的に面白いかといって,ここでは「人間」ではなく「ゴブリンとかブラウニー」を替え子にしたらという反事実条件において,「わたし」という個体は交換されずにその種族だけが変わるような意味になっているということです.

 もちろんそんなことは実際には不可能ですから,作中でもツッコミが入っています:

ゴブリンの子供なんかまともに育てられるわけないだろう

それに人間以外の替え子にしていたらおまえは今ここにいない


おかしな条件文ですが,一読してただちにそのおかしな推論を読者は理解できますし,おかしい部分もそれとして理解できます.これはフォコニエらが得意とする概念融合*1 の一例として分析することができるでしょう.

 こういうのは,あとになって「ああ〜何かそういう実例があったんだけど どこだっけ〜?」となってしまうことが多々ありまして,とりあえずメモしてみた次第です.

*1:conceptual blending