たかが some,たかが do ──とな?


平均的な中高生〜大学生(英文科除く)くらいの方だと,次の英文は単純な英文解釈の力試しにちょうどいいかもしれません:

Some foes do become friends.


引用もとはこちらです.もちろん,この写真も解釈のヒントになるでしょう.

 単語5つだけの単純な英文ですが,うまく訳すとはいかないまでも,ポイントをおさえて正確に理解できる人は意外と少ないのではないかと思います(日頃の経験からすると).

 さて,この英文の和訳として次のようなものしか思い浮かばないとしましょう:

何人かの敵は友達になる.


 難しさでいうと「解釈<和訳」ですから,こうしたぎこちない訳しか頭に浮かばなかったとしてもそれは仕方ありません.

 問題は,「この和訳で完璧でしょ?」と思ってしまう場合です.つまり,「この訳では英文の言わんとしていることをくみ取れていないな」という感覚をもっているかどうかが大事です.

 で,もちろんこれではくみ取れていないわけです.

 上記の訳文では,2つのポイントが抜け落ちています:ひとつは "some" の意味,もうひとつは "do" のはたらきです.

 順番に記していきましょう.

some の意味


 "some foes" の some は中学校では「いくつかの」・「何人かの」といった訳語とペアで教わることが多いかと思います.しかし,それでは several とどうちがうのかハッキリしません.また,写真に写っているのはたった2人だけです.「2人」=「何人か」というのは,どこかズレている感じがしないでしょうか.

 意外と知らないでいる方が多いのですが,some は「全体の一部」という意味です:"some foes" だったら,foes という全体のなかの一部を指します.これに対して several は「4〜5人くらいの」というばくぜんとした数をあらわします.

 言い換えますと,several は「4〜5人くらい」というをあらわし,some は「全体の一部」という割合をあらわします.

 ですから,some X が主語になっている場合,次のように解釈をするのが妥当です:

《Some X》 + 《動詞句》=「X のなかには 〜するものもいる/ある」(割合


あるいは,「ときには〜ということがある」という頻度に解釈するケースもあります:

《Some X》 + 《動詞句》=「ときには X が 〜することもある」(頻度


 では,ここで問題の例文にもどって,"Some foes do become friends" をこのパターンに当てはめてみましょう:

「敵のなかには友達になるものもいる」(割合)


あるいは,

「ときには敵が友達になることがある」(頻度)


最初の訳よりは「わかってるな」という感じになってきました.

 ついでにここで "become friends" の意味をもう少し考えてみます.これは「敵」どうしが friends になるということですから,「敵どうしが仲良くなる」という訳し方が思い浮かびます:

「ときには敵どうしが仲良くなることがある」

強調の do


 さて,もうひとつの大事なポイントは do のはたらきです.

 文法書での分類で do には「強調の do」というものがあるということは習って覚えている方は多いのですが,「では,強調とはどんなことでしょうか」と訊ねられると困ってしまうことが多いようです──たとえば,「強調」というからには力いっぱい大声で発音すればいいとでも?

 強調の主なはたらきのひとつは,「聞き手や読者の予想とは逆ですよ」と合図することにあります.強調の do は肯定文で使われますから,聞き手/読者が否定を予想しているときに使うわけです.

 いま取り上げている例文ですと,「敵どうしが仲良くなる」というのは常識として予想されにくい事態です(否定の予想).このとき,「そんな事態は起こりそうにないよ」という聞き手・読者の予想をみこして,「でも実はその逆ですよ」と合図するのがこの強調の do の機能です.

 すると,強調の do を挿入することで問題の例文が言わんとしているのは,

(そんなことはないとお思いでしょうが実は)「ときには敵どうしが仲良くなることがある」


というニュアンスなのだとわかります.

 この点を取り入れてやや大げさに訳してみますと,次のようになります:

「ときには敵どうしなのに仲良くなることある」

くらべてみる


──以上,(1) some の意味と (2) 強調の do について記しました.

 では,あらためて最初の仮訳と並べてみましょう:

  • 「何人かの敵は友達になる.」
  • 「ときには敵どうしだって仲良くなることもある.」


こうして比べてみますと,前者の方が「いまいちわかってなさそう」に感じられるのではないでしょうか.

おまけ:some について


久野ススム+高見健一『謎解きの英文法:冠詞と名詞』から抜粋:

上に,several と a few の違いが,「3〜5あたりの絶対値:と「3〜5あたりの数を下限として期待値,標準値より少ない数」にあることを示しました.それでは,この2つの表現と比較して,some はどのような数を表すのでしょうか.(5) と同じ次の状況を考えてみましょう.

(13) 実際の状況:2000年11月の米国大統領選挙で,Ralph Nader が約278万票(3%),Patrick Buchanan が45万票(0.4%)を得た.
a. Many didn't vote, some voted for Nader, and a few voted for Buchanan.
b. *Many didn't vote, a few voted for Nader, and some voted for Buchanan. (事実に反する文)


英語の話し手は,異口同音に,(13a) は事実を正確に表わしている文であるが,(13b) は事実に反する文である,と言います.つまり,some が 278万人(3%)を指し,a few が45万人(0.4%)を指すのはいいが,逆に,a few が278万人を指し,some が45万人(0.4%)を指すことはできないことになります.したがって,some と a few が並べて使われるとき,some の方が a few より大きな数を表す,ということです(some > a few).
(pp. 44-45)


[asin:4874243010:detail]


※この本も含めて,「謎解きの英文法」シリーズはおすすめです.