医療関連のあやしい組織の特徴


黒影さんのはてなブックマーク経由で知った "Questionable Organizations: An Overview" を訳して紹介します.医療関連には日本でもあやしげな団体がありますが,この文章ではそうした団体を判別する手がかりを9項目あげて解説しています.

 文中のあやしい団体の名称はさすがに(幸いなことに)定訳がないみたいなので適当に訳しています.訳文でおかしな点がありましたらご指摘ください.

あやしい組織:概略

Stephen Barrett, "Questionable Organizations: An Overview"


あやしげな健康法を勧めている人々は組織をつくって効率をあげようとすることがよくあります.信頼できるグループとそうでないグループを見分けるにはどうしたらいいのでしょうか? たしかな方法はないものの,次の9項目を確かめてみるとその助けになるかもしれません:


1. そのグループの考えは,科学の主流に属していますか? グループによっては,創始者が科学コミュニティからつまはじきにされたと感じて創設されたものがあります.これをおおっぴらにしているグループに,American Quack Association というものがあります.その主たる目的は,メンバーに感情面での支えをもたらすこと,じぶんたちの批判者をコケにすること,そして,通例に基づかない開業医に世間が好感をもつように仕向けることです.このグループは1985年に医師の Jonathan Wrightにより創設されました.彼が会長となり,また副会長には Roy Kupsinel という,フロリダ出身の「ホーリスティックな」開業医が着任しました.このグループはおよそ300名の会員を集めましたが,いまは活動していないようです.


2. そのグループのリーダーや助言者はどんな人でしょうか? 「フッ化物研究国際学会」は立派そうな名前ですが,実のところはフッ化物添加に反対するグループです.「予防医学国際アカデミー」(現在は「栄養と予防医学の国際アカデミー」と称しています)のリーダーには,Carlton Fredericks, Linus Pauling, Lendon Smith といった人々が名を連ねていますが,彼らは疑わしい栄養学の実践を推進している人々です.「健康資源会議」(Health Resources Council) は「代替」健康法を推進すべく Gary Null が創設した団体です.


3. 会員資格はどんなものでしょうか? 科学の専門家であることが求められているでしょうか──それとも,会費を払う気さえあればいいのでしょうか?ほぼ何びとに対しても開かれている組織(American Association for the Advancement of Scienceのような組織)はたしかに尊敬すべきではありますが,ある人がその組織に属しているからといって感心してはいけません.「栄養コンサルタント国際アカデミー」「アメリカ栄養コンサルタント協会」「生化学研究者全米アカデミー」「セラピー専門家国際協会」は魅惑的な資格を発行していますが,こうした「専門家会員資格」に必要とされているのはいくばくかの会費だけです.「研究所」や「リサーチセンター」を称する任意団体には,たんに個人や少数の人々がみずからの営利活動をさも立派そうにみせかけるために自称しているだけのものがあります.たとえば,「スポーツ医学全米アカデミー」はもとをただせば民間企業が疑わしい製品を販売するために立ち上げたものです.また,「ノーベル・リサーチ・ソサエティ」はたんにインチキ器具を販売しているにすぎません.


4. そのグループは特定の治療法を奨励していますか? そうしたグループの大半はきわめて怪しいとみるべきです.たしかに,1世紀前なら,新しい有効なアイディアを評価するのはむずかしく,医学コミュニティによって棄却されることもよくありました.でも,今日では,新しい治療法は有効とわかればすぐさま科学的な医師たちに歓迎されますから,特別なグループがわざわざ宣伝するにおよばないのです.キレート療法の宣伝を主たる目的としている「医学推進のためのアメリカン・コレッジ」はこのカテゴリーに入ります.他の団体としては:

  • The American Academy of Environmental Medicine(「臨床的エコロジー」や多種化学物質過敏症のデタラメな概念を宣伝)
  • The American Association of Orthopedic Medicine(prolotherapy を宣伝)
  • The American Schizophrenia Association(メガビタミンを宣伝) および,この上部組織である the Huxley Institute for Biosocial Research.
  • The International Health Foundation(カンジダ過敏症(?)のでたらめな診断法を宣伝)
  • The Physicians' Association for Eradicating Chronic Disease(「マハリシ・アーユル-ヴェーダ」を宣伝)
  • The National Wellness Coalition,(「手頃で効果的な医療と健康で豊かな国のカギとなるものとして健康の原理・指針・実践を奨励する」のを使命として掲げる.しかし,そのレトリックに反して,この団体は証明された健康法にはほとんど注意を向けず多種多様な非科学的なアプローチを奨励している)
  • The World Research Association および癌治療法を奨励するさまざまなグループ


少数ですが,科学に基づく治療法と疑わしい治療法をまぜあわせて促進しているグループもあります.たとえば American Academy of Otolaryngic Allergy は臨床的エコロジーなる概念を宣伝しており,また American Academy of Osteopathy は頭蓋セラピーを信奉しています.グループによっては独自の認定委員会すら設置しているものもあります.


5. 証明された公衆衛生施策に反対していますか? フッ素添加や予防接種に反対しているなら,そのグループがきわめて間違った考えをもっていると疑う手がかりになります.そうした団体のなかには,団体名から本音の目的が漏れてしまっているものがときどきあります.「純粋な水」や「安全水」を掲げるグループは,ほぼつねに,本当はフッ素添加に反対するという主目的を隠しているものです.「予防歯科衛生協会」はフッ素添加と並んでアマルガム修復の使用にも反対しています.「世界児童健康協会」はカイロプラクティック療法のグループで,子供への予防接種に反対しています.


6. そのグループは医療市場の政府規制を撤廃するという「選択の自由」を信奉していますか? そうした「自由」は,議員を説得して法的制限なしにインチキ療法を販売する許可を得るための方便にすぎません.たとえば Consumers for Dental Care は歯の詰め物を除去するよう患者に勧める歯科医たちに対して「差別」があると称してこれをなくそうとしています.


7. グループの資金はどうなっていますか? 「責任ある栄養会議」は,その高邁そうな名称に反して,保健食品その他の栄養製品を製造・販売する業者を代弁する団体です.とはいえ,企業に資金援助を受けているような団体は信用できないのだと決めつけないでください.信用できるかどうかの決め手とすべきは,その資金ではなくてアイディアの妥当性です.The National Dairy Council と the Institute of Food Technologists は,栄養に関する正確な出版物によって科学コミュニティから高く評価されています.


8. そのグループは実在する団体でしょうか? 起業者のなかには,体重管理ピル・精力増強剤・さまざまな栄養補助食品の販売促進を目的としてあれこれの名前をでっちあげるものもいます.「研究所」「クリニック」「ラボ」「リサーチセンター」であるとか専門家らしそうな「学会」がインターネットやメールを使って製品を宣伝する扇情的な主張をしていたら,それはおそらくインチキです.たとえば,「アメリカ泌尿器クリニック」は ヴァイグラ(ヴァイアグラではなく)という勃起不能のインチキ治療薬を宣伝していますが,じつはミズーリ州カンザスシティにある貸し出しメールボックスにすぎません.こうした詐欺は他にもあり,有名な本物の慈善団体に似た名称のインチキ団体への寄付を募るものがあります.


9. そのグループが学校なら,公認の機関によって認定を受けているでしょうか? 認定とは,教育プログラムが経営・組織・財政の面で公認の機関による規準を満たしているという公的な承認です.合州国では,学校の教育基準は,米国教育局 (USOE) か Council on Recognition of Postsecondary Accreditation (CORPA) により承認された機関からなるネットワークが設定しています.USOE も CORPA も個別の学校を認定するわけではなく,そうした認定をする全国または地域の機関を承認するのです.ほぼすべてのそうした機関は任意の非政府団体です.認定により,履修単位を学校間で移すことができるようになり,これはさまざまな職業に入るための基盤として使われています.もちろん,認定は信頼性の保証になりませんし,尊敬すべき大学との提携も信頼性を保証しません.カイロプラクティック占星術・鍼治療・東洋医学・マッサージ・自然療法などを教える学校が,その教育内容の妥当性をほとんど考慮することなく機関が認定していることは教育省長官も認識しています.さらに,多くの大学はまともな科学に加えて健康関連のナンセンスも推進しています.テンプル大学の先進科学センターやコロンビア大学Richard and Hinda Rosenthal代替医学センターなどは,基本的には優れた機関に悪しき部署があるという例です.


 私は,以下の団体には非常に不信を抱いています.このリストに他の団体を加えたい方は連絡してください.


〔以下,団体リスト省略〕