“60秒でまなぶ言語学”シリーズ


ドイツの4つの大学が共同で運営している ELLO (English Language and Linguistics Online) というのがありまして,学部生向けに言語学ポッドキャストを配信しています.話している言語は英語です.

 そのメインになっているのが "Mr. Bergs, I have a question"(「Bergsせんせい,しつもーん」)というシリーズで,言語学の基本的なトピックを基本的に1回1分で解説しています.たとえば「語用論ってなんですか」の回を書き起こしてみますと,こんな具合:

What does Pragmatics deal with?

Question: What does pragmatics deal with?

Mr. Bergs: Pragmatics is another branch where linguistics deals with meaning, just as semantics does. But in contrast to semantics, pragmatics looks at meaning in context, meaning in use, and looks at what speakers want to say, what their intention is. Semantics in contrast looks at meaning out of context. So something that is, eh, inter-individual, what is shared by all speakers. Pragmatics is more detailed and looks at what speakers really do in concrete cases of use, so here we look at time and place of utterance, interlocutors, and all these things. These are very important for pragmatics, and they are mostly ignored in the semantic perspective on meaning in language.


蛇足ながら訳してみましょう:

質問:語用論はなにをやるものなんでしょうか?

せんせい:意味論と同じく,語用論も意味を扱う言語学の一分野です.でも,意味論とはちがって,語用論が目を向けるのは文脈における意味,使用における意味であり,話し手が言わんとすること,その意図を考えるんです.これと反対に,意味論は文脈なしの意味を考えます.つまり,人々の間にあるもの,話し手全員に共有されているものに目を向けるわけです.語用論はそれよりも詳しく,具体的な使用の事例ごとに話し手がじっさいにやっていることに着目します.つまり,発話の時間と場所や交話者たちといったことを考えるんです.こうした要素は,そのほとんどが意味論の観点から言語の意味を考えるときには無視されます.


このとおり語彙は平易で,英語の発音もゆっくりです.

 今年の春からスタートしたようで,これまでに音声学→形態論→意味論→語用論と進んできています.(統語論のトピックはこれから登場するんでしょうか?)

 このように,英語のリスニング+言語学のお勉強に便利なポッドキャストとなっています.大学で「英語学概論」といった講義を受けてみて言語学に関心をもった方におすすめ.

つけたし

そういえば,「リスニング+言語学」というコンセプトでつくられた本もあります:

First Steps in English Linguistics 英語言語学の第一歩

First Steps in English Linguistics 英語言語学の第一歩