Chapter 11: COMMON THEMES:[11-24]〜[11-26]


SFAA翻訳のつづきです.

[11-24]
分子の観点から言うと,あらゆる均衡状態のかげでは分子が絶え間なく活動している.たとえば,ソーダ水をいれたボトルに栓をしておくと,溶液から空気中にでてくる二酸化炭素と水分子の濃度が上昇していき,やがて二酸化炭素が液体にもどる率と液体から漏れ出る率が等しくなる.二酸化炭素は漏れ出るのと戻るのを高い率で続けるが,その一方で観察される濃度と圧力はずっと定常状態のままにとどまる.液体それ自体の中では,つねに水分子と二酸化炭素分子が結合したり分離したりを繰り返しており,これにより弱酸性濃度の均衡が保たれている.飲むとぴりっとした味がするのはこのためだ.

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しかしながら,過程の中にはこれほど容易に可逆的でないものもある.化合物がはっきりと再び分離しない場合や,溶液から発散してでてくる気体がどこかに吹き流されてしまった場合には,その過程は一方向に継続し,ついには反応物質がなくなってしまう──動的な均衡ではなく静的な均衡となるわけだ.また,ときにシステムはちょっとした攪乱に対しては安定を保つものの大きな攪乱には安定をなくすような状態にある場合もある.たとえば転げ落ちて丘の斜面で止まっている岩は,少しの力が加わっただけではそのまま動かないでいる.ところが,めいっぱい蹴ってやると再び斜面を転がりだし,ふもとにきたところでもっと安定した状態でとまる.

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多くのシステム(系)にはフィードバックの下位システムが備わっており,これによりシステムの一部が一定に保たれたり,あるいは少なくとも変異の幅が一定限度にとどめられている.暖房・冷却システムを調節するよう設計されたサーモスタットは,よくこの例に出される.また,哺乳類の一群の生体反応が体温を狭い変動幅にとどめているのもこれにあたる.しかし,こうした仕組みも,その通常の作動範囲をはるかに超えた条件のもとではうまくいかなくなってしまう(たとえば日射病のせいで人体の冷却システムが停止したときなどにこれが起きている).


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