"Negated, or not" - Christopher Potts @ Language Log
ちょっと昔の Language Log から,クリストファー・ポッツの投稿:
「否定されてんだかどうだか」(NEGATED OR NOT)
ちょっとビックリだけど,英語の構文には否定の要素を付け足したり取り除いたりしても意味が変わらないものがある.ポール・ポスタル (Paul Postal) は,「アメリカ卑俗英語減度詞の1タイプの構造」(The structure of one type of American English vulgar minimizer)でぼく好みのそういう事例を論じている.この論文は,彼の新しい論文集『懐疑的言語論』(Skeptical Linguistic Essays) に入っている.(この論文って,たしか,かつて The grammar of squat と呼ばれていたものだよね.それにしても,これはポールのものとはいえ懐疑的すぎると思うな.) 例 (1)-(2) で注意すべき問題の卑語減度詞は squat だ:
(1) Eddie knows squat about phrenology. (jack, beans, diddley)
(2) Eddie doesn't know squat about phrenology.
〔「エディーは骨相学(起重機,豆,ペテン)についてまるで知らない」〕
面白いことに,(1) も (2) も,エディーが骨相学について何も知らないという意味だ.自然言語の否定は論理的な否定と同じで言明を対象にしてその真理値をひっくり返すんだという仮説にとって,このことは厄介なものになりそうだ.この仮説は,(例えば)(1) が真なら (2) は偽になると予測する.でも,実際のところ両者は意味的に等価なんだよね.
卑語減度詞だけが否定による極性の反転を拒むわけじゃあない.
ぼくの知ってる,否定に無頓着な要素を (3)-(6) に例示してみた.それぞれ性質は異なるし,なかには否定によって意味が微妙に変化するものもある.いずれにしても,どの事例でも論理学ふうの否定はあまり助けにならない.
(3)
a. That'll teach you not to tease the alligators.
b. That'll teach you to tease the alligators.
(4)
a. I wonder whether we can't find some time to shoot pool this evening.
b. I wonder whether we can find some time to shoot pool this evening.
(5)
a. You shouldn't play with the alligators, I don't think.
b. You shouldn't play with the alligators, I think.
(6)
a. I couldn't care less about monster trucks.(Skeptical Linguistic Essays, p.361脚註3を参照)
b. I could care less about monster trucks.
例 (6b) の could care less は規範文法家の一部からさんざん非難を受けている.なお,他の事例は,ぼくの知るかぎり,これまで物議はかもしていない.
- 作者: Paul M. Postal
- 出版社/メーカー: Oxford University Press
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