(つづき)「ありがとうございます/ました」etc.
まだ引きずっております.
ちょっと気がついたことを2つほどメモ.
◆ひとつめ.
ニコニコ動画を見ていて気づいたんですが,動画をアップロードしてくれたひとに感謝する場合,動画の開始部分でコメントする場合だと「おつです」の現在時制が適切に感じられるのに対して,動画の終了部分でコメントする場合だと「おつでした」の過去時制が適切に感じられます:
(1) 文脈1:動画の開始時点で:
a. 「うpおつです」
b. #「うpおつでした」
(2) 文脈2:動画の終了時点で:
a. #「うpおつです」
b. 「うpおつでした」(他に「ありがとうでした」もみかけます)
「うp」=アップロードの行為は動画を見ている時点ですでに過去のことなのですから,現在/過去時制の使い分けは他の要因に左右されると考えられます.
(頻度で言えば,動画の開始時点で「うpおつ(です)」とコメントする方が圧倒的に多いのですが)
◆ふたつめ.
「おめでとうございます」に対応する過去時制の表現は使われにくい:#「おめでとうございました」
これは,「ありがとうござます/ました」の意味をふまえると意外な事実です.
つまり,
(a) 話し手が
(b) 聞き手に
(c) 事柄pについて
(d) 感謝する
という内容のうち,事柄pを過去にするのが過去時制「タ」の機能であるなら,同様に「おめでとうございました」についても,
(a) 話し手 S が
(b) 聞き手 H に
(c) 事柄p について
(d) 祝う
の事柄pが過去になるはずです:いま起きたばかりのことについて現在時制を,過去の出来事については過去時制を選択する,というわけですね.そのような使い分けは理にかなっているように思われますが,じっさいにはそのような使い分けはなされていないようです.
下記のページでは,結婚式で司会者が「おめでとうございました」と述べたらクレームが来たという話が紹介されています:
NHKのQ&A:
【ことばQ&A】おめでとうございました?
http://www.nhk.or.jp/bunken/research/kotoba/kotoba_qa_05010101.html
『放送研究と調査』97年4月号に「おめでとうございます/ました」の調査結果がのっているとのこと.
_φ( ̄ー ̄ )メモメモ