語用論

Yalcin & Knobe (2010 squib)「『ファット・トニーは死んだかもしれない』:認識的法助動詞に関する実験の覚え書き」

ある「立ち聞き」場面設定において認識様相の言明と様相なしの定言的断定が真だと判断するか偽だと判断するかを調査しました,という squib: Seth Yalcin and Joshua Knobe "Fat Tony Might Be Dead: An Experimental Note on Epistemic Modals" (PDF; Dece…

抜粋:Wierzbicka (1991):認識的 must vs. will の相違

「ヴェジビツカ」だったり「ヴィエルジュビツカ」だったりする Wierzbicka せんせいの20年前の本から認識様相と発語内効力に関する箇所を抜き書き: ■文献: Anna Wierzbicka, Cross-cultural pragmatics: the semantics of human interaction. Berlin/New Y…

書き換えればいいってもんじゃない:構成的規則と規制的規則のメモ

サールの提案している「構成的規則」と「規制的規則(統制的規則)」の区別について,大澤真幸は次のように指摘しています:

クリップ:ジェフリー・ナンバーグ「意味の転移」(Transfers of meaning)

レイコフらの認知意味論で脚光を浴びて久しい(20年以上ですか)隠喩・換喩ですが,ほぼ同じ現象について彼らとは異なる分析を提示している研究者にジェフリー・ナンバーグがいます.彼が「述語転移」(predicate transfer) の仮説についてある程度まとめて論…

英語では“感情が見える”らしい

まずは下の例文を読んでください: (1) 私は彼が{悲しい/嬉しい/楽しい}のを見たことがない. (2) ぼくが悲しいのを見て,田中さんがはげましてくれた. (3) ぼくが嬉しいのを見て,山田さんが「なにかいいことがあったの?」と訊いてきた. (1)-(3) いず…

意味のレベル:「文の意味」・「言明の意味」・「発話の意味」

意味論・語用論の教科書(著者によれば学部3−4年から大学院レベルとのこと)から,意味のレベルに関する箇所を抜粋して訳しました: Meaning in Language: An Introduction to Semantics and Pragmatics (Oxford Textbooks in Linguistics)作者: Alan Cruse,…

"TRUE" invited inference

「わしンち」様の7月1日*1より: 1.『海晴姉様は、私のことが大切だから叱る』*2 2.『兄は、私のことが大切じゃないから叱らない』 1が真なら、2もまた真である。 (1) P → Q (2) ¬P → ¬Q 語用論的にはトゥルーです.*3 *1:過去ログに入った場合はこちらかな…

虚構伝達・偽装言語行為

昨日のエントリに関連して,少し虚構論をつまみぐいしています.よくわからない領域ですが,ぼくからみて「ひとまずこれなら出発点にしやすそうだな」と思ったのが下記の「虚構伝達」の定式化: 話者Sは テクストT を発話することによって,以下のことを意図…

おにいさんと園児の会話

以下は架空のおにいさんと園児の会話です: ゆうくん:(あー,だりー)「ゆうくんね,のどかわいたの.」 おにいさん:「ゆうくんはもうお兄ちゃんなんだから,「ぼくはのどがかわいた」って云おうね.」 ゆうくん:「?…ぼくはのどかわいたの.」 おにいさ…

「主観性」・「主体性」関連の文献

[リスト更新:2008-05-08] いま手元にあって確認できる範囲で言語における「主観性」・「主体性」に関する文献を調べてみると,次のようなものがありました: 池上嘉彦, 2004. 「言語における〈主観性〉と〈主観性〉の言語的指標 (1)」『認知言語学論考』N…

ジョン・ライオンズ「直示と主体性=主観性:我発語スル,故ニ我アリ?」(7)

しばらくつづきましたが,ライオンズの訳読も今回でおしまいです. 原文:John Lyons, “Deixis and Subjectivity: Loquor, ergo sum?”, in R. J. Jarvella & W. Klein (eds.), Speech, Place, and Action, John Wiley & Sons, 1982. これまでの訳:(1),(2)…

ロビン・カーストン『思考と発話:明示的伝達の語用論』

とりあえず値段が鬼です. 思考と発話 明示的伝達の語用論作者: ロビン・カーストン,西山佑司,内田聖二,松井智子,武内道子,山?英一出版社/メーカー: 研究社発売日: 2008/02/22メディア: 単行本(ソフトカバー) クリック: 29回この商品を含むブログ (2件) を…

「美しいクイズ」@深夜の馬鹿力

丁寧といえば,なんかね,あのー,僕クイズすごい好きなんですよ.今日もQさまだしてもらってて,楽しかったんですけど,そのー,とくにQさまが好きなんですよ.んでー,えーと,その,クイズ好きに,クイズ好きのリスナーはぜったいうなづいてくれると思…

ピンカーのいう「急進的語用論」について

はてなダイアリー「shorebird 進化心理学中心の書評など」の shorebirdさんがピンカー The Stuff of Thought の読書ノートを継続して書いていらっしゃいます. 「読書中 「The Stuff of Thought」 第3章 その6」: http://d.hatena.ne.jp/shorebird/20080122…

認識様相の指標について

英語の法助動詞があらわす認識様相には,少なくとも (a)認識主体と (b)認識の時点という2つの変数が関わっているようです.

Anna Papafragou のモダリティ論文の解説

とある勉強会で用意した文章です.下記の文献の形式的な部分を解説してみました: Anna Papafragou, Epistemic modality and truth conditions, Lingua 116(2006), pp.1688-1702 [PDF] http://papafragou.psych.udel.edu/papers/Lingua-epmodality.pdf 形式…

(つづき)「ありがとうございます/ました」etc.

まだ引きずっております.ちょっと気がついたことを2つほどメモ.

グライス「協調の原則」の誤解

B.L. Davies, Grice's Cooperative Principle: Meaning and rationality, J. Pragmatics, 39 (2007), pp.2308-2333. 1. Introduction 2. Grice's Cooperative Principle 3. Grice's Cooperative Principle and 'cooperation' 4. Setting the scene: a backgr…

(つづき)「ありがとうございます/ました」etc.

前回のエントリーでは,「ありがとうございます/ました」の時制が感謝の対象となる事柄の時間を限定している点に注目しました. 今回は,それとはまた別の側面に目を向けてみます.