言語学

フランク・パーマー Mood and Modality(第2版)にいちおう翻訳があるらしい

Frank Palmer, Mood and Modality(叙法と様相)は様相(モダリティ)研究の基本文献でして,誰か訳せばいいのにと思っていたのですが,下記の翻訳があるそうです(via killhiguchiさん):

ジャッケンドフ+ピンカー vs. チョムスキー+ハウザー+フィッチ論争:Language Log でのまとめ

ジャッケンドフせんせいの『思考と意味のユーザーズガイド』訳読からのながれで再訪.もうずいぶん昔のことですが,『サイエンス』誌に掲載されたハウザー+チョムスキー+フィッチの「言語機能」論文に端を発する,ジャッケンドフ+ピンカーとの論争があり…

伝言ゲーム防止:フィルモアの「文→モダリティ+命題」について

「文」の構成素を大きく「モダリティ」と「命題」にわける古典的な文献として Fillmore (1968) "The case for case"*1 が引用されることがあります.次の規則がそれです: *1:「格文法」の記念碑的な論文.Fillmore, Charles, "The case for case," in Emmon…

クリップ:ピンカー & ジャッケンドフ「言語機能:どのへんが特別なのか?」

Steven Pinker and Ray Jackendoff (2005) "The faculty of language: what’s special about it?" Cognition 95, pp.201–236. (PDF) 当時 Linguist List などでもこれや関連論文が話題にされていたように記憶してますが,さっぱりフォローしてないものであら…

Leech 2004 より:反事実的な d've 形式について

ジェフリー・リーチ『意味と英語動詞』(第3版)より,仮定的意味を表すのに had have の縮約 d've /dəv/ が使われるようになりつつある,というセクションを訳して紹介します: Meaning and the English Verb作者: Geoffrey N. Leech出版社/メーカー: Routl…

「時制=遠近対立」説に対するテイラーの批判

上記のエントリで言及した「時制=遠近対立」説に対して,認知文法の代表的研究者であるジョン・テイラーが次のように批判しています: 前節で,共通する意味成分を用いて指小辞を統一的に説明するヴィアズビカの試みに言及したが,過去時制に関しても中核的…

文献詮索:「過去時制=遠隔形」説をさかのぼる:Steel 1975

英語において,過去時制の形式は過去の出来事を表す以外にも,反事実性や丁寧さを表したりする用法をもっています.そこで,これらは何らかの意味での「遠さ」を表すという説が提唱されています.たとえばラネカーの認知文法では,現在時制と過去時制は prox…

抜粋:大堀 on 中断節

大堀壽夫, 言語的知識としての構文──複文の類型論に向けて,坂原茂 (ed.) 『認知言語学の発展』,pp. 281-315, ひつじ書房, 2000. 4. 4. 日本語においては依存関係をもった節の後置は会話体でよく見られるが,構文スキーマとしてさらに興味深いのは,「から…

多重継承階層(Syntactic Theoryより抄訳)

I. A. Sag, T. Wasow & E. M. Bender, Syntactic Theory (2nd edition) より,「多重継承階層」(multiple inheritance hierarchy) のセクションを抄訳しました: 「多重継承階層」(Scribd) Syntactic Theory: A Formal Introduction (Csli Lecture Notes, No…

名前のわかりにくい言語学者リスト:発音・性別・カナ表記

modified: 2014-06-04 発音・カナ表記のわかりにくい言語学者をリストにしました. 主なソース: Laurie Bauer, The Linguistics Student's Handbook, Edinburgh University Press, 2007, pp. 148-149 ※「これもあるぞ!」というタレコミを歓迎します.

ポッドキャストで言語学入門:「形態素ってなんですか?」

さらに形態素の回も書き起こしてみました: #16: 形態素ってなんですか? ■ Question: What is a morpheme? ■ Mr. Bergs: The morpheme is the smallest meaning-bearing units. So that's the unit that actually has the meaning in contrast to phoneme, …

ポッドキャストで言語学入門:「音素ってなんですか?」

ELLOのポッドキャスト「Bergsせんせい,しつもーん」から,音素の回を書き起こしてみました.(ポッドキャストの一覧はこちら) #02: 音素ってなんですか? ■Question: What is a phoneme? ■Mr. Bergs: A phoneme is the smallest meaning-distinguishing un…

ポッドキャスト「Bergsせんせい,しつもーん」一覧

English Language and Linguistics が配信しているポッドキャスト "Mr. Bergs, I have a question" シリーズを一覧にしてみました:

ポッドキャストで言語学入門:「音声学」・「音韻論」

English Language and Linguistics のポッドキャスト「Bergsせんせい,しつもーん」から,音声学の回と音韻論の回を書き起こしてみました. みてのとおり,どの回も1分〜2分程度でお手軽に聴けます. たとえば英文科で「英語学概論」をならったばかりの学部…

Bergsてんてーのオンライン講義「共時言語学入門」をご紹介

2008-02-04更新: リストに #10 意味論II を追加しました 以前にも紹介しましたが,ドイツの4大学が共同で運営している ELLO (English Language and Linguistics Online) では英語言語学(英語学)を学ぶ学生のためにポッドキャストを配信しているほか,Alexa…

義務法@古典日本語

忘れないうちにメモしておこうと思いまして. 叙法のうち,「ねばならない」といった意味を表す「義務法」(debitive) は『言語学大辞典』によりますとラトヴィア語のみにみられると記されています: 【義務法】 印欧語族バルト語派の中でラトヴィア語のみに…

補足:「概念構造は複数の層 (tier) に分解される」

このところ継続して訳しているジャッケンドフの議論に「マクロ役割層」(macrorole tier) や「主題層」(thematic tier) といった用語がでてきていますが,これについて補足の説明を手短に記しておきます. おおよそ文の「意味」に相当するものとして,ジャッ…

寺村 (1984) から抜粋:コトと主観的判断の「融合」

やっぱり寺村秀夫『日本語のシンタクスと意味』は勉強になります. 日本語のシンタクスと意味 (第2巻)作者: 寺村秀夫出版社/メーカー: くろしお出版発売日: 1984/09/20メディア: 単行本購入: 3人 クリック: 6回この商品を含むブログ (5件) を見る 日本語を勉…

定延利之『煩悩の文法』

さっき帰りに本屋でみかけて「あれっ」と思って購入しました.煩悩の文法―体験を語りたがる人びとの欲望が日本語の文法システムをゆさぶる話 (ちくま新書)作者: 定延利之出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2008/07メディア: 新書購入: 2人 クリック: 95回こ…

“60秒でまなぶ言語学”シリーズ

ドイツの4つの大学が共同で運営している ELLO (English Language and Linguistics Online) というのがありまして,学部生向けに言語学のポッドキャストを配信しています.話している言語は英語です. そのメインになっているのが "Mr. Bergs, I have a quest…

文献メモ:「言語学の論証における直観」

Thomas Wasow & Jennifer Arnold, "Intuitions in linguistic argumentation," Lingua 115 (2005) 1481–1496. アブストラクト Generative grammarians have relied on introspective intuitions of well-formedness as their primary source of data. The ov…

Syntactic Theory: a formal introduction (Second Edition)

今日届いたばかりでちゃんと読んでないのですが――Syntactic Theory: A Formal Introduction (Csli Lecture Notes, No. 152)作者: Ivan A. Sag,Thomas Wasow,Emily M. Bender出版社/メーカー: Stanford Univ Center for the Study発売日: 2003/04/01メディア:…

ニール・スミスの「序文」から抜粋(還元主義にご注意を)

(…)この論にはさらなる含意がある.それは,科学における還元 (reduction) に関する一般的な見解は不適切だ,ということだ.言うまでもなく,我々としては,心的なものについての諸理論を──言語学も含めて──脳と関連領域の理論に統合したいとは思っている…

「主観性」@トローゴットと「主体性」@ラネカーのちがい

おなじ "subjectivity" というタームを使っているのでこんがらがっちゃいますが,トローゴットとラネカーでは定義がちょっとちがいます.上記の訳文でラネカーも少しふれていますように,トローゴットの場合,ある構成素が (a) 話し手の主観的な態度を (b) …

ちゃんとしようと思いました orz

〔...〕そもそも,キーワードとは,諸刃の剣である.重要な考えをわかりやすく一言でまとめたものであると同時に,本来ある豊かな内容を忘れて理解した気にさせてしまう恐れがある.確実なのは,研究においてキーワードのみを追いかけていると,独創的な結果…

チョムスキー:規則随順について

以前,サールが規則随順 (rule-following) について話しているインタビューを訳してご紹介しました(「おしえてサールせんせい:チョムスキーと規則随順問題」).一方,そこで批判されているチョムスキーは次のように述べています: 〔スウェーデン語とデン…