メモ

von Fintel & Gillies (2010) "Must ... Stay ... Strong!" 最終原稿

Kai von Fintel のブログで,von Fintel & Gillies (2010) "Must ... Stay ... Strong!" の最終原稿が公開されてます: Update: Must … Stay … Strong! この論文のもとになった研究発表については,2年ほどまえにここでとりあげました: 「must p は p より…

Lyons (1977) のモダリティ論を抜粋・翻訳・註釈するスレ (5):番外(ヘア『道徳の言語』)

もはやじぶんでも読まないかもしれないエントリですが.

西山佑司「デカルト派言語学」:「創造性」に関する注意点

西山佑司,「デカルト派言語学」『岩波講座現代思想4 言語論的転回』. 岩波書店,1993年. いま読んでいる「概念とは何か?」で言われている「創造性」に関連して,少しだけ注意点:

intenSional な例文:知らないことを望んでいる?

ところで,さきほどクルーグマンのブログから引いた箇所は,ちょっと面白いものになっています:

Lyons (1977) のモダリティ論を抜粋・翻訳・註釈するスレ (4)

前回の続きを1パラグラフだけ. すでに見ておいたように,主観的認識様相は発話の I-say-so 要素を話し手が限定しているのだと分析できる.客観的様相をもつ発話は(それが真理様相であれ認識様相であれ)限定抜きの I-say-so 要素をもっているのだと記述で…

Portner (2009) より難破船の例の議論

Modality (Oxford Surveys in Semantics and Pragmatics)作者: Paul Portner出版社/メーカー: Oxford University Press, USA発売日: 2009/03/25メディア: ペーパーバック購入: 3人 クリック: 42回この商品を含むブログ (5件) を見る 昨日のエントリで抜粋し…

抜粋:ハッキング (1967) より認識的可能性の箇所(付け足しアリ)

イアン・ハッキングの論文から,認識的可能性の箇所だけ抜粋して訳しました*1. *1:追記:この難破船の例による議論は von Fintel and Gillies (2004) および Paul Portner (2009) Modality p.166 に紹介されています.

伝言ゲーム防止:フィルモアの「文→モダリティ+命題」について

「文」の構成素を大きく「モダリティ」と「命題」にわける古典的な文献として Fillmore (1968) "The case for case"*1 が引用されることがあります.次の規則がそれです: *1:「格文法」の記念碑的な論文.Fillmore, Charles, "The case for case," in Emmon…

when節に反事実的な仮定法過去完了形式:フィルモアへの反例?

Fillmore (1990)*1 や Dancygier and Sweetser (2005)*2 では条件節・時間節とその動詞形式について「認識的構え」の観点による分析を提案しています*3.彼らの言う認識的構え (epistemic stance) とは,節があらわす事態に対して話し手が現実のこととみなし…

クリップ:ジェフリー・ナンバーグ「意味の転移」(Transfers of meaning)

レイコフらの認知意味論で脚光を浴びて久しい(20年以上ですか)隠喩・換喩ですが,ほぼ同じ現象について彼らとは異なる分析を提示している研究者にジェフリー・ナンバーグがいます.彼が「述語転移」(predicate transfer) の仮説についてある程度まとめて論…

クリップ:ピンカー & ジャッケンドフ「言語機能:どのへんが特別なのか?」

Steven Pinker and Ray Jackendoff (2005) "The faculty of language: what’s special about it?" Cognition 95, pp.201–236. (PDF) 当時 Linguist List などでもこれや関連論文が話題にされていたように記憶してますが,さっぱりフォローしてないものであら…

if節で「静態述語」が未来指示になるケース

いま訳読している論文で,フィルモアは if節の動詞の時間指示はもっぱら静態述語 vs. 動態述語のちがいで決まると述べています.つまり, 静態述語+現在時制形式 (If she lives here I’ll get a chance to meet her. ) : 現在指示,中立的な認識的構え H …

事例のメモ:いまも成り立っている状態について過去時制を使うケース

状態述語+過去時制でありながら,「もはやそうではない」という no longer 推意がないケースは,探すとそれなりにみつかります.こういう場合,現在でもその状態は成り立っているのに過去時制を選択することにはなんらかの動機があるわけですが,ひとつには…

「時制=遠近対立」説に対するテイラーの批判

上記のエントリで言及した「時制=遠近対立」説に対して,認知文法の代表的研究者であるジョン・テイラーが次のように批判しています: 前節で,共通する意味成分を用いて指小辞を統一的に説明するヴィアズビカの試みに言及したが,過去時制に関しても中核的…

文献詮索:「過去時制=遠隔形」説をさかのぼる:Steel 1975

英語において,過去時制の形式は過去の出来事を表す以外にも,反事実性や丁寧さを表したりする用法をもっています.そこで,これらは何らかの意味での「遠さ」を表すという説が提唱されています.たとえばラネカーの認知文法では,現在時制と過去時制は prox…

"Wish I was here"

ジャッケンドフせんせいのスクラップ (pdf) から: (※wish の補文は反事実になりますから,裏返すと I am not here が前提になっているわけですね.)

人称/視点の例:"he" = "I"

文脈:「クリスマスツリーが自然に倒れたら持って行っていいよ」と言ったら本当に倒れてサリーにツリーをとられてしまった少年が,サリーの家にやってきている: サリー: What are you standing on our porch for? Go home! 少年: I want our tree back! サ…

関係節の先行詞を額面どおりに読んじゃダメです

いま訳したサールのインタビューには,こんなセンテンスがあります: So anyway, those are just very superficial thoughts [that I'd like to discuss in an eventual book about political philosophy]. 表面だけをみると,カッコでくくった関係節の先行…

抜粋:大堀 on 中断節

大堀壽夫, 言語的知識としての構文──複文の類型論に向けて,坂原茂 (ed.) 『認知言語学の発展』,pp. 281-315, ひつじ書房, 2000. 4. 4. 日本語においては依存関係をもった節の後置は会話体でよく見られるが,構文スキーマとしてさらに興味深いのは,「から…

中断節を入れると会話っぽい訳文になるかも?

サールてんてーのインタビューを訳していて気付いたことなのですが,どうも,会話らしい訳文にするには「〜から」とか「〜ですし」みたいな中断節を適度に使ってあげるとそれっぽくなるみたいです. たとえば―― |サール: もし誰かがみかけと現実の区別なん…

「〜だなんて」の「だ」

人から,「きみの癖みたいですね」と指摘されて気がついたのですが,じぶんが和訳した文章を改めて読んでみると 心が体に影響するだなんて,いったいどうすれば可能なんだ? もし意識的な現象みたいなものが実在するとして,そんなものが物質的な粒子の世界…

「俺がそう思いたがっているのだからそう思わせてくれ」

視点についてもうひとつ. twitter でぶつぶつ言ったことをこちらに載せておきます. ファイルを整理してたらこんな例文のメモがでてきた:「俺がそう思いたがっているのだからそう思わせてくれ」(銀英伝OVA, ep.93).若本ボイスで読んでいただきたい.(tw…

指示表現と視点の取り方:山岡洋一氏の指摘

翻訳家・山岡洋一氏の「飛躍と密着の間」から,ある英文和訳の例を引きます: 暴漢がこちらにやってくるとか、車が吹っ飛んでくるとかいう情景をなかば覚悟して、マーティはふりむいた。だが、いつもの静かな住宅街にいるのはマーティただひとりだ。 (Turnin…

「の」がないとおさまりが悪いのだ

killhiguchiさんからいただいたコメントに関係して,「のだ」が多用されている文章をひとつ引いてみます: 噺家にしても,ただ名前だけじゃダメなんで,その名前を保つためには,人知れぬ努力がいるんです.ある意味においては位置が上がれば上がるほど,余…

番外:Leibnitz

ゴットフリート・ライプニッツてんてーの発音を Longman Pronunciation Dictionary (2nd edition) で引いてみますと── ˈlaɪb nɪts, ˈliːb- ── Ger [ˈlaɪb nɪts] このように,「ライブニッツ」(英独おなじ)または「リーブニッツ」(英)としか載ってません…

honorifics and quantification:容認度どうでしょう

twitterで koljaさんに教えてもらったネタを忘れないうちにメモ. 以下に挙げる例文の容認度が気になってます.「思う」の主語は「教授」だという解釈のもとで容認されるかどうか: (1) どの教授も そのクラスを教えたと 思っている. (2) どの教授も そのク…

主観,客観,キャットフード:評価文脈/評価主体への相対化

このところ自分が関心をもって考えている話題について,少しまとめのメモを書いてみようと思います.(と言いつつ,あまりまとまりませんが) 主観読みと客観読み 昨日やっと訳読を終えたジャッケンドフの議論では,心理述語・評価述語がもつ主観読みと客観…

義務法@古典日本語

忘れないうちにメモしておこうと思いまして. 叙法のうち,「ねばならない」といった意味を表す「義務法」(debitive) は『言語学大辞典』によりますとラトヴィア語のみにみられると記されています: 【義務法】 印欧語族バルト語派の中でラトヴィア語のみに…

「ので」の用法

「おやつを買うので 300円必要です」 「感電するので 皮手袋が必要です」*1 一つ目の例は「おやつを買うために300円必要」という意味で,二つ目の例は「感電しないようにするために手袋が必要」という意味です.それぞれ,「ので」を「には」に置き換えると…

Google Audio Indexing (gaudi) がすごい(コーパス言語学の未来像かも?)

Google Audio Indexing: http://labs.google.com/gaudi どういうものなのかは使ってみればすぐにわかりますが,動画の中の発言を検索できるというシロモノです. 上記のページに飛ぶと,デフォルトで "health" が検索されており,このキーワードが含まれる動…